トランスフォーメーション4.0における労働組合 労働と社会の公正 従業員のための インダストリー4.0 IGメタルの「ワーク+イノベーション」プロジェクト カトリン・シェーファース、 ヨッヘン・シュロート 2020年9月 デジタル化は、生産プロ セスと企業組織を転換 し、従業員とその職場 に多大な影響を与える。 IGメタルは「ワーク+イノ ベーション」プロジェクト によって、継続教育プロ グラムを企業独自の革 新プロジェクトと組み合 わせ、被用者がこの変 化に参画する方法を見 つけ出した。 IG メ タ ル は 、 従 業 員 の 知識やニーズと事業所 の要件を繋ぐことで、国 内外におけるイノベーシ ョンと新技術に従業員 の視点を提供している。 FRIEDRICH-EBERT-STIFTUNG – SHAPING INDUSTRY 4.0 ON WORKERS’ TERMS 労働と社会の公正 従業員のための インダストリー4.0 IGメタルの「ワーク+イノベーション」プロジェクト 新しい労働の世界では、企業がデジタルテクノロジ ーを利用して雇用関係と組織を変更しており、それ は多くの場合、従業員に不利益をもたらしている。 FESの「 ト ラ ン ス フ ォ ー メ ー シ ョ ン 4.0に お け る 労 働 組 合 」プ ロ ジ ェ ク ト は 、労 働 組 合 が ど の よ う に 能 力 を動員し、戦略的に展開して、忍び寄る、あるいは 破壊的な労働の不安定化に対抗しているかを検証 する。このプロジェクトは、対話と行動を重視した アプローチにより、労働組合の戦略立案や実験、目 標を定めた転換を支援することを意図している。 CONTENT 目 次 概要 2 1 「ワーク+イノベーション」への IGメタルの取り組みの歴史 3 2 「ワーク+イノベーション」(W+I) プロジェクトの構造とアプローチ 4 2.1 2.2 2.3 「エキスパートワーク4.0」のためのW+I技能取得課程......... 5 事業所レベルの実施プロジェクト........................... 6 付随的な支援策........................................... 7 3 積極的に転換を形成――4つの実例 8 3.1 3.2 3.3 3.4 3.5 技能取得と新しいデジタルテクノロジー導入への参加 ——マン・ウント・フンメル.................................. 8 グローバルな労働時間編成 ―エアバス・オペレーションズの「日常的修理daily repair」.. 9 暫定的な結論............................................. 10 構造変化の積極的形成——シーメンス・テュービンゲンの事例... 11 グローバルな公正に尽力——リア・コーポレーションの事例..... 12 4 結論および概観 14 Bibliography............................................. 16 1 FRIEDRICH-EBERT-STIFTUNG – SHAPING INDUSTRY 4.0 ON WORKERS’ TERMS 概 要 経済と労働社会の転換は、企業組織、テクノロジー、 職務内容、文化の根本的変化を招いている。生産労働 と管理労働、サービス労働、知識労働の旧来の区別が なくなりつつある。ビジネスモデルが変化している。 職業のために取得した専門技能の半減期が短くなっ ている。同時に、現在の産業は世界規模で編成され、 複雑なサプライチェーンが全世界に広がり、計り知 れない数のサプライヤーやサービス企業が現場を支 配している。歴史的に、テクノロジーの進歩は常にあ った。しかし、この転換を類のないものにしているの は、そのスピードと従業員・製品・社会に対する永続 的な影響だけでなく、先進国と開発途上国との格差 でもある(IndustriALL 2017: 4)。だが、どこを見て も、労働の世界の転換はオープンなプロセスである。 その転換はテクノロジー主導の結果ではなく、事業 所や社会政策的な議論の開かれた場である。IGメタ ルは、企業の戦略に対抗するべく数々のイニシアテ ィブを開始し、人間をこの議論の中心に据えようと している。 イエナ・パワーリソース・アプローチは、この議論 の立て方の理論的な根拠となる。この手段を利用し て、労働組合の行動力を評価することができる。この アプローチは、さまざまな状況において各労働組合 が自分たちの利益を貫徹させるために、どの権限(構 造上の権限、組織上の権限、制度上の権限、社会上の 権限)を利用できるかを浮き彫りにしてくれる (Schmalz/Dörre 2014)。 さらに2社の事例を用いて、仕事の世界の転換を 推進する要素や傾向、力学が、各事業所の敷地や国境 によって制限されないことを示す。安定した職場や 働く人のことを考えた労働に関する決定は、もはや 現地で下されるのではなく、次第に(本社の場所にか かわらず)企業レベルで下されるようになっている ため、労働組合活動はますます国際的なレベルで考 えなければならなくなるだろう。 本稿では「ワーク+イノベーション」プロジェクト を取り上げ、従業員代表委員会や職場委員、IGメタル が、どのように従業員のためにデジタル・トランスフ ォーメーションを方向づけ、革新プロセスに積極的 に関与しているかを概説したい。2社の事例に基づ いて、利益代表者が組織的に強く、紛争対応力があり、 専門知識に基づき行動し、労働組合の能力を拡大・適 用・活用する場合にのみ、必要な力を展開できること も示す。 2 THE HISTORY OF IG METALL’S COMMITMENT TO»WORK AND INNOVATION« 1 「ワーク+イノベーション」への IGメタルの取り組みの歴史 すべては2015年に連邦労働社会省がグリーンブッ クを発表したときから始まった。「私たちは労働4.0 を話題にするとき、インダストリー4.0によって生ま れる新しい技術の世界だけを指しているのではない。 将来の労働の全て、および多様性の話をしているの だ」とアンドレア・ナーレス連邦労働社会大臣(当時) は グリ ーンブ ック の序文 で述 べてい る( Federal Ministry of Labour and Social Affairs 2015: 7)。 こうして、それまでドイツでは主として技術を中心 に進んでいた将来の経済的変化プロセスの視野が広 がり、「人間という要因」が統合されたのである。 IGメタルの労働組合による事業所政策と教育活動 にとって、これはプロジェクト案「ワーク+イノベー ション――能力強化+>未来の形成」の開始のシグ ナルとなった(Janitz/Schroth 2019: 205)。IGメタ ルのスローガンによると、「インダストリー4.0には 労働4.0が必要」である 1 。要するに、「ワーク+イノ ベーション」プロジェクトの狙いは、第4次産業革命 で労働政策的展開の展望を見出すために貢献するこ とだった。以下、この野心的なプロジェクトの重要な 行動方針、実例、最初の結論について解説する。 IGメタルは同年の労働組合大会で、確実、公正で自 ら決定する労働の世界を要求した。イェルク・ホフマ ンIGメタル会長は将来に関するプレゼンテーション で、製品や工程のデジタル化が将来の労働社会に幅 広い影響を及ぼすことを強調した。ホフマンによる と、デジタル化がもたらすチャンスを活用するには、 事業所政策・協約政策によって提供される可能性を 徹底的に利用し、代替案を指摘し、行動について勧告 し、これらのプロセスに可能な限り早い段階で従業 員を関与させなければならない。これを成功させる ために、IGメタルは職場委員と従業員代表委員会を 支援する技能取得プログラムを提供する必要がある。 ホフマンによると、これは「労働組合教育活動の主要 な課題であり、IGメタル全体の中核的任務」である (IG Metall 2015: 8)。 労働組合大会代議員が、「IGメタル参加労働組合 (IG Metall Participation Trade Union)」という 動議により、IGメタル執行部に対し、事業所における 各利益代表の発言力を強化するために、持続可能で 積極的な事業所政策のパイロット・プロジェクトを 策定するとともに、さらに踏み込んで、実践に移行す るための専門的支援を提供するよう求めたのは理に かなっている(cf. ibid.: 237 ff.)。 1 ドイツの文脈で、「インダストリー4.0」は一般的に産業のデジタル 化を表す。インターネットによって人や機械、製品をネットワーク で結ぶことが、このプロセスの中心的な特徴である。「労働4.0」と いう用語は、技術的議論にとどまらず、従業員の労働関係をも議論 の中心にすることを目的に、2015年に連邦労働社会省が作り出した (cf. Federal Ministry of Labour and Social Affairs 2019)。 3 FRIEDRICH-EBERT-STIFTUNG – SHAPING INDUSTRY 4.0 ON WORKERS’ TERMS 2 「ワーク+イノベーション」(W+I) 2 プロジェクトの構造とアプローチ 事業所の利益代表者 3 がデジタル・トランスフォー メーションとの関連で将来直面する現実や課題は、 非常に多様なものになるだろう。この仮定が、「ワー ク+イノベーション」プロジェクト開発の一番初め の構想の基礎となった。ある事業所では製造や製品 そのもののタイプが変化し、別の事業所では新しい 設備の導入に伴ってシフト計画に関する問題が生じ るかもしれない。他のケースでは、ビジネスモデル自 体やバリューチェーンにおける当該事業所の立場が 変化するかもしれない。ドイツの事業所や企業のデ ジタル成熟度は、これまでも今も決して均一ではな い。すでに「スマート・ファクトリー」の見本になっ ている生産現場があったり、担当の従業員代表が複 雑な製造実行システム(Manufacturing Execution Systems)の導入に関する協定を結んでいたりする一 方で、隣の企業は工場のさまざまな部門で既存の4.0 テ ク ノ ロ ジ ー を 評 価 し 始 め た ば か り で あ る ( cf. Schroth/ Reuter/Schafers 2019)。 同時に、最初の仮定によれば、企業側が転換に対処 するための明確な戦略をまだ立てていないことが多い。 しかし、各事業所には1つの共通点がある――特に転 換期において、労働組合の能力を利用・拡大するよう求 めていることである。この方法によってのみ、デジタル ワークを働く人のことを考えたものにすることができ る。ここが「ワーク+イノベーション」の出番である。 2 「ワーク+イノベーション」は、連邦労働社会省と欧州社会基金(ESF) によって資金を供給された。プロジェクト期間は3年半である。公的 資金からの供給額は約500万ユーロに達した。原則として、ソーシャ ル・パートナー、私法・公法に基づく法人、ドイツに事業所拠点を有 する企業が、プロジェクト構想を提示してこれらの公的資金を申請で きる。W+Iプロジェクトの総額は約1000万ユーロであった。ドイツ全国 から100を超える事業所・企業が参加した。このプロジェクトは、IGメ タル内では執行部の決議によって開始され、執行委員会と諮問委員会 を設置、さらに執行部のさまざまな部門と各地域執行部メンバーが内 容面で継続的にサポートした。IGメタル執行部が雇用する社会科学、 法律および企業経営分野の専門家に加えて、IGメタル教育センターの 経験豊かな職業教育教員や労働分野のコンサルティング会社・学術機 関のネットワークも、このプロジェクトを支援した。 3 事業所の利益代表者は、従業員代表委員会、職場委員またはその両方で ある。従業員代表委員会の権利は事業所組織法に定められている。従業 員代表委員会は会社の全従業員を代表し、使用者と、例えば事業所合意 を交渉する(本稿5ページも参照)。他方、職場委員は当該事業所でIGメ タル組合員の従業員を代表する。職場委員は、各分野における組合員と その関心事を把握しており、従業員代表委員会を支援することができ る。したがって従業員代表委員会と従業員との仲介役である。 IGメタルのアプローチー確実かつ公正 で、自ら決定する方法でデジタルな労働の 世界を形成 ドイツでは事業所組織法(Betriebsverfassungsge setz―― 以 下 、 こ の 法 律 を 表 す ド イ ツ 語 の 頭 字 語 「BetrVG」という)に共同決定の機会が定められてお り、従業員代表委員会 4 が、広範囲にわたる分野で労 働の世界の形成に積極的な役割を果たせるようにし ている。したがって使用者は、代表の参加なくして (ほんの少し例を挙げれば)労働時間の配分(§87 BetrVG)や労働安全衛生(§87 BetrVG)、従業員の技 能取得(§§96-98 BetrVG)、職場の設計(§90 BetrVG) といったテーマに取り組むことができない。従業員 代表委員会を、新しいテクノロジーの導入(§90 BetrVG)にも関与させなければならず、それによって 特にデジタル・トランスフォーメーション時代に重 要な役割を与えられている(cf. IG Metall, n.d.)。 しかし、この事実上の制度上の権限(事業所組織法に 規定)があることだけで事業所レベルで従業員のた めの労働の世界を実際に形作ることはできない。そ れより、利益代表者側の政治的行動能力も必要であ る。 図1は、従業員代表委員会の各活動分野を形成で きる、あるいは形成できない一連の選択肢を示して いる。生産へのデジタル・アシスト・システム(例え ばタブレットの利用)の導入は、この好例である。否 定的なシナリオでは、高い標準化と厳格なワークフ ロー・プロセスによって、作業がますます単調かつ片 寄ったものになる。その結果、従業員の技能が不要と なる。加えて、従業員に関するデータ、例えば従業員 の行動や過失などに関するデータがリアルタイムで 記録されるようになる。オートメーションの拡大に 伴い、システムが従業員の作業を引き継ぎ、従業員が ますます余るようになる。 4 事業所組織法(BetrVG)§1によれば、従業員代表委員会は、少な くとも5人の従業員のいる事業所で選出することができる。ドイツ 事業所組織法(BetrVG)は、使用者と従業員代表委員会との協力の ルールを定めている。その結果、従業員代表委員会には拘束力のあ る情報・共同決定権がある。 4 PROACTIVELY SHAPING TRANSFORMATION – FOUR PRACTICAL EXAMPLES 図1 「 積極的アプローチ 」 業務内容 人間がシステムを利用 スキルアップ:結果や作業の体制に効果を与えうる興味 深い仕事 システムが人間に指示・指導 技能剥奪:高度な標準化により調整の余地のない 仕事 作業編成 合意された目標と参加による協力強化の機会 行動の余地がほとんどない重責 テクノロジー キャリア開発・技能取得機会の改善 オートメーション化が目標:無人の工場、システ ムが人を指導 技能 ストレスが多く魅力のない仕事から解放 特定の技能のみ データ 労働時間 職場 問題解決のために情報・知識を利用可能、個人データと技 術データの分離 データを利用して行動や業績を管理 個人的状況に基づいて仕事を計画することが可能 いつでも(ほとんど)どこでも仕事 図2 「 ワーク+イノベーション 」 の 3 大行動方針 ディーセントワーク 企業プロジェクト 訓練コース「ワーク 4.0」 訓練モジュール 指 定 ア ド バ イ ザ ー や IG メ タ ル 教 育コーディネーター、外部専門家 ネットワークによるテーマ別の カウンセリングとプロセス支援 同じ例で、肯定的なシナリオの場合、デジタル・ア シスト・システムの導入は、従業員の作業を豊かにす る効果をもたらすこともある。W+Iの範囲内で繰り返 しテストしたように、ここでは従業員代表委員会の側 の積極的な行動が特に重要である。従業員代表委員会 は経営陣と協力して、アシスト・システムを学習シス テムを利用して設計するためのプロセスを開始する。 同時に、促進プログラムを作り、従業員に新しい、よ り複雑な業務に適した技能を取得するよう促す。従業 員一人一人が、すべての対策の実施に関与する。技能 取得に関する現行労働協約のルールが適用される。 したがって、従業員代表委員会が自らの能力を利 用すれば、転換できることは明らかである。ここで、 「ワーク+イノベーション」の3つの行動方針の軸、 すなわち技能取得課程、事業所での実践、必要な支援 策が作用し始める。以下、これらについて更に詳しく 説明する。 2.1 「エキスパートワーク4.0」のため のW+I技能取得課程 プロジェクトの行動方針の軸の1つは、それぞれ 3日間の5部から成る技能取得課程の検討・実施で あった(cf. IG Metall 2017: 6) このプロジェクト・モジュールの目的は、参加者が、 従業員の関与と参加によって、事業所の変化を認識・ 把握、計画、管理、検討および実施できるようにする ことだった。テーマ は、従業員の視点から見たイノ ベーション・プロセスの形成、業務編成・構成に関す 5 FRIEDRICH-EBERT-STIFTUNG – SHAPING INDUSTRY 4.0 ON WORKERS’ TERMS る問題、テクノロジーの変化に対する洞察、事業所に おける行動に対する影響、およびプロジェクト管理 と、プロジェクト結果を持続可能な形で維持する問 題などである。プロジェクトの初めに、具体的な内容 について参加者と合意し、それぞれの技能取得課程 が参加事業所のニーズに正確に適合するようにした。 その結果、あらかじめ設定された硬直的なセミナー 構成ではなく、事業所の現状に合わせた柔軟なセミ ナー・モジュールになった。 参加者は誰か? プロジェクトに参加する事業所 5 では、各部署から 選ばれた従業員、人事責任者、労働組合の職場委員、 従業員代表委員会のメンバーを教育する機会を得た。 したがって、この教育課程は労働者代表だけを対象 とするのではなく、経営陣と従業員代表委員会が共 同で参加者を任命した。 の学習を行うことができる(cf. IG Metall 2018: 7)。 将来の業務を形成できるようにするために必要な能 力を、実際的な環境の中で教えることができる。W+I モジュールの一部として、参加者はデジタル・アシス ト・システム(タブレット)導入に際し、行動に関す る代替案を考案した。 「ボーフム学習工場」の特色は、技術だけに焦点を 合わせているのではなく、とりわけ人に及ぼす影響 を中心に据えていることで、これは今も変わらない。 したがって、このセミナー・モジュールのおかげで、 参加者は現実の生産プロセスに基づいて技術的・組 織的変化の機会とリスクの両方を理解し、それに関 連する労働条件への影響をじかに体験し、良質なデ ジタルワークの指針に基づいてそれらを形成するた めの代替案を考えることができた 6 。 なぜこのアプローチなのか? 利益代表者だけでなく、事業所内の専門家も技能 取得シリーズの対象とするアプローチは、双方(従業 員代表ならびに経営陣)が、できるだけ早く労働政策 に対する共通の理解を深めるとともに、最終的にど のように事業所レベルでデジタル化プロセスを方向 づけるつもりなのかについて、最初から合意しなけ ればならないという事実に基づいたからである。こ うして、懸念を初期段階で考慮し、行動の余地を活用 し、従業員の視点からデジタル化の形成に関する提 案を積極的に導入することができた。しかし、それで もデジタル化の形成において企業と従業員の利害が 異なることに変わりはなかった。これらの幅広いテ ーマにおいても、企業の主な目的が競争力の強化や 新たなマーケットシェアの獲得、投資収益率の改善 であるのに対し、従業員代表の目的は「良い労働」と 雇用維持に注力することである(cf.Janitz/Schroth 2019: 214)。 技能取得課程の教育上の特徴 ——労働政策的学習工場(ラーニング・ファクトリー) というモジュール 5つのモジュールのうちの1つは、いわゆる学習 工場(ラーニング・ファクトリー)で実施された。こ のために、IGメタルとルール大学ボーフム校(RUB) 生産システム講座との共同事務所を設け、緊密に協 力しながら、教育コンセプトを立案した。 学習工場では、現実的な工場環境で問題・行動指向 5 パイロット事業所がプロジェクトに参加するためには、プロジェク ト申請を行い、通常は事業所でキックオフ・ワークショップを開き、 事業所の当事者の期待や目標を確認し、従業員代表委員会と経営陣 がプロジェクト確認書に署名する。この確認書には、選ばれた従業 員がW+I技能取得シリーズに参加できるようにするため、労働時間中 に休暇を与える企業の義務や、独自の具体的な実施プロジェクトを 開発し、社会的パートナーシップに基づいて事業所内で実施する意 志が盛り込まれている。 2.2 事業所レベルの実施プロジェクト 労働組合の力は、実際にはその力を発揮・適用でき る場所にこそある。そのため、事業所における実施プ ロジェクトの開発が、さらなる軸となるプロジェク トの要素であった。こうして、参加者が新たに獲得し た知識を各プロジェクト事業所の現実的な条件の下 で具体的に応用し、事業所独自の状況で積極的に形 成するという役割を果たせることが判明した。 では、「労働4.0」は自分の事業所にとって具体的に 何を意味するか。我々は現在、自分たちの拠点の長所 と短所は何だと考えているか。行動の必要が最も大 きいのはどこか。職場や労働条件がどのように変化 しているかを知るために必要な情報がすべてあるか。 良いデジタルワークを積極的に形成するために、ど のようなアイデアがあるか。どのような抵抗を予想 しなければならないか、どのようにそれに対処する か。誰を、いつ関与させるか。 事業所プロジェクトの開始時には多くの疑問があ った。参加者は、プロジェクト資金で用意した労働組 合書記のサポートを受けながら、これらの質問に答 えた。書記たちは、事業所プロジェクト・グループの 設置や経営陣との対話を支援し、具体的なプロジェ クトの進め方や責任の定義、有望なコミュニケーシ ョン戦略や参加戦略について助言を与えた。2.1)で 示した技能取得課程では、各カリキュラムの初めに プロジェクトの現状を報告した。結果として、他の参 加者の経験や意見を取り入れたり、必要に応じてサ ポートを計画したり、共同で解決策を模索すること ができた。 6 YouTubeで学習工場のコンセプトに関する2本の短い動画を視聴可 能:https://youtu.be/Alilhriq3Ss(英語) 6 PROACTIVELY SHAPING TRANSFORMATION – FOUR PRACTICAL EXAMPLES 決定的な段階——新しい知識を具体的に応用する 合計100を超える参加事業所・企業のプロジェクト 内容は極めて多様であった。最初に説明したとおり、 その大きな原因は多様性であり、事業所における転 換はその多様性に直面している。しかし、中心的テー マとなるのは、従業員の技能取得、職場における能力 開発およびデジタル化が業務や労働条件、労働時間 の形成にもたらす課題である。本稿の第3章で、事業 所の実例をさらに詳しく紹介する。 2.3 付随的な支援策 プロジェクトの一環として、参加事業所に労働分 野の外部専門家ネットワークを利用する機会を提供 した。その費用は助成金によって賄われた。このネッ トワークには、約30の学術研究組織・機関、労働研究 者、生産システム設計などのプロセス・コンサルタン トと専門家が含まれる。多くの場合、これは事業所の 当事者のさらなる戦略構築プロセスの基礎となり、 企業内の社会的パートナーシップに基づく解決を支 援した。 地域ネットワーク会議や実践・学術対話で、必要と なる支援策を補った。参加者はワークショップで、デ ジタル・トランスフォーメーションの社会的・経済的 影響を調べたり、アジャイルな業務形態からネット ワーク化されたアシスト・システムの利用まで、現在 の傾向についての知識を深めたりすることができた。 加えて、事業所実施プロジェクトへの取り組み成功 例を発表し、他の研究プロジェクトの調査結果の評 価を行った。とりわけ、約50のイベントを開催したこ とが、交流やネットワーク作りの時間と場所を提供 することになった。 7 FRIEDRICH-EBERT-STIFTUNG – SHAPING INDUSTRY 4.0 ON WORKERS’ TERMS 3 積極的に転換を形成— 4 つの実例 技能取得、コンサルティング、事業所のための「オ ーダーメイド」実施プロジェクトの3本柱に基づき、 積極的な転換プロセス形成を成功させるより具体的 な方法を示すために、以下、優れた事業所の詳しい実 例を紹介する 7 。これらの事例は、「ワーク+イノベー ション」のようなプロジェクトが、労働組合の能力の 強化・拡大にどのように貢献し得るかを概説するう えでも適している。 3.1 技能取得と新しいデジタルテクノ ロジー導入への参加——マン・ウント・フン メル モジュールの一部として、他の参加事業所と交流し ながら開発された。W+Iコンサルタントのネットワー クを通じて、1人の女性社会学者が自らの専門知識 を活かし、アンケートの立案にあたってチームを支 援した。 アンケートの目的は、何よりもまず現状を確認す ること、すなわち、従業員がデジタル化をめぐる現状 をどのように評価しているか、どこに具体的な行動 の必要性があると考えているかを知ることである ――何と言っても、それぞれの分野の専門家として、 潜在的に必要な対策を評価するのに最適な人材は従 業員自身である。 ニーダーバイエルンのマルクルコーフェンにあるマ ン・ウント・フンメルは、石油や燃料、空気浄化フィ ルターの主要メーカーのひとつである。従業員は約 3000人で、3分の2強が生産分野に従事。同社は世界 最大のフィルター工場を運営し、主に自動車産業に 製品を供給している。デジタル化は、ずっと以前から 従業員の日常生活の一部になっている。そのため、23 人で構成する従業員代表委員会は、将来に対応でき る組織になることで、待ち受ける課題を克服したい と考えていた。 「ワーク+イノベーション」に参加した当初、労使 双方の代表で構成されるプロジェクト・グループの 参加者は、「インダストリー4.0」や「デジタル化」と いったバズワードの意味をはっきり認識していなか った。同様に、デジタル化が自社にとって何を意味す るか、従業員がどこまで転換の課題に対する準備が できている実感があるかも漠然としていた。しかし、 この最後の点が従業員代表委員会にとって特に重要 だった。 同委員会は委員会活動への参加率の高さを大いに 重視していたため、プロジェクト・グループは従業員 アンケートを考案した。このアンケートは技能取得 アンケートの結果、以下の事実が明らかになった。 デジタル化の進展に伴い、業務や技能の要件も増え ており、従業員は日常的にすでにその影響を感じて いる。加えて回答者は、自分がこれらの新しい要件を (現在すでに)満たしていないと感じることが多い と述べた。時間的制約が厳しくなり、いくつかの業務 を同時に処理することが増え、障害の影響を受けや すくなっている一方で、十分な訓練期間を設けてい ないため、従業員の負担増になっている。 このアンケートのもう1つの重要な結果は、営業・ 技術部門のスタッフも、生産部門とまったく同じか、 場合によってはより強く変革の影響を受けているこ とだった。 継続教育については、プロジェクト・グループはア ンケートによって、例えばIT関連問題、英語力、従業 員が必要とする設備の操作に関する具体的な資格要 件を確認した。 良いニュースは、従業員の大多数が、継続教育を受 けたいという強い意欲を示したことである。従業員 代表委員会の任務については、行動の必要性、例えば グループ分けやリスク評価、戦略的継続教育、技能マ トリックスの開発などを確認し、詳細に決められた。 7 さまざまな事業所から収集したその他のW+Iの事例は、IGメタルのマ ニュアル「デジタル・トランスフォーメーションの形成」(2019a) に詳述されている。このマニュアルには、40を超える主要プロジェ クトのデータも掲載されている(IGメタル2019b)。 従業員代表委員会のさらなる努力を正当化する従 業員との直接交流(組織上の権限)だけでなく、使用 8 PROACTIVELY SHAPING TRANSFORMATION – FOUR PRACTICAL EXAMPLES 者と従業員代表委員会との協力(制度上の権限)に関 しても、プロジェクトの範囲を超えて永続的な変化 が達成された。その時以来、使用者側は初期段階で委 員会を関与させ、最初から従業員のことも考えてデ ジタル化プロジェクトを方向づけている。その結果、 多くの箇所で、使用者だけでは考慮しなかったであ ろうニーズに注意を向けることができた。これはあ る自律走行フォークリフトのパイロット段階で具体 的に示された――計画の一番最初から、作業編成の 変更も考慮されたのである。 プロジェクト実施中に得た知識や経験は、持続的 に従業員代表委員会に利益をもたらした。従業員代 表委員会は、グループ従業員代表委員会レベルで取 り組んだデジタル化に関する枠組事業所合意の交渉 に、直接その知識を活用することができたのである。 その結果、将来の転換プロセスでも従業員の利益を 中心にすえることになった(cf. Schroth/Reuter/ Schafers 2020)。 「現在、デジタル化により多くの注意を払うように なっている。使用者が機械を調達した場合、有能な従 業員代表委員会がなければ、情報提供の義務だけで は我々が共同決定を行うには十分ではない。我々は 技術的専門知識を持ち、従業員代表委員会メンバー のエンジニアと共に現場に行かなければならない。 そして我々も専門知識に基づき、問題を明らかにし なければならない」。変わらず明らかなことが1つあ る――制度上の権限は常に妥協の対象になる。企業 は、デジタル・トランスフォーメーションとの関連に おいても、主に競争力の強化や新しいマーケットシ ェアの獲得、投資収益率の改善を重視する。労働組合 や従業員代表委員会、従業員は、確実かつ公正で、自 ら決定する労働に注力している。 3.2 グローバルな労働時間編成——エア バス・オペレーションズの「日常的修理 daily repair」 「ワーク+イノベーション」はマン・ウント・フンメ ルで労働組合の能力を強化 上記の例は、マン・ウント・フンメルでの「ワーク +イノベーション」が、労働組合の能力増強にどのよ うに貢献しているかを説明している。「大規模なデジ タル化プロジェクトにおいて、我々は現在、従業員代 表委員会という立場で常に関与している。使用者も これを受け入れている。新しいテクノロジーは、我々 抜きでは絶対に導入されない。我々は最初からプロ セスに関与し、こう自問することができる――我々 が本当に求めているのは何か。そして、それを達成す るために何が必要か」 とミヒャエル・ヌスバウマー 従業員代表委員会副議長は言う。労働組合としてし っかり組織された従業員の関与と、従業員代表委員 会と使用者側がプロジェクト実施中に対等な立場で 向き合ったという事実は、組織上の権限を強化した。 (正式に存在する)制度上の権限も活用・強化され た。従業員代表委員会は、学習プロセスを経て(この 場合はデジタルテクノロジーの導入において)より 専門知識に基づいて共同決定を下し、より強力なイ ニシアティブによって従業員の技能取得を改善する ことができた。 労働者代表として、従業員のために積極的に転換 プロセスを形成できた理由は、正式な共同決定の機 会を利用できたことだけではない。むしろ、行動でき るようにするには、規定の対象に関する知識が必要 である。W+Iは、まさにそれを実行した。従業員代表 委員会はプロジェクトの一環として、必要な学習プ ロセスに参加することができた。 例えば、上記の枠組事業所合意が締結され、委員会 の関与が深まったことによって、プロセスの持続可 能性が示された。従業員代表委員会の副議長は言う。 デジタル・トランスフォーメーションは多くの点で、 従業員に対する柔軟性の要求を強める。エアバス・オ ペレーションズGmbHの労働時間編成は、この適例であ る。およそ2万人 8 の同社従業員も労働時間の編成に おける裁量の余地を求めているため、事業所の実施プ ロジェクトは革新的な労働時間モデルの開発から始 まった(cf. Schroth/Reuter/Schafers 2020)。 プロジェクト・グループは第一歩として現状の分 析を実施した。具体的には、労働時間に関する既存の 事業所合意、総合事業所合意、およびグループ事業所 合意すべてを調査・検討した。事業所レベルで共同決 定にいくつかの「空白」、すなわち、現在のところ合 意が存在しない分野のあることが明らかになった。 例えば、出張中の労働時間やモバイルワークの取り 扱いである。もう1つ浮かび上がった重要な分野は、 労働時間口座 * である。大多数のエアバス従業員、特 にシフト勤務者は、労働時間が平均を超えていた。 そこでプロジェクト・グループは、シフト勤務の枠 組条件を改善する方法を見つけたいと考えた。その 基礎となったのは、2017年にIGメタルが実施した大 規模な従業員アンケートである。このアンケートで は、7000を超える事業所の68万人に質問をし、そこか らエアバス独自のデータセットが作成された。その 結果——全国的傾向と同様に、同社の従業員は何より も、柔軟性と信頼性、労働時間に関する主権の拡大と、 週労働時間短縮の選択肢を求めていた。 8 この従業員数は、プロジェクト対象拠点、すなわちハンブルク、ブ レーメン、シュターデ、ブクステフーデの人数である。同社では全 世界180の拠点で、およそ13万人の従業員が働いている。 * 日本語訳注 労働時間口座とは労働者が残業した時に、その残業時間 を口座に貯めておき、後日、休暇などで相殺するもの。労働者全体 の6割に普及。 9 FRIEDRICH-EBERT-STIFTUNG – SHAPING INDUSTRY 4.0 ON WORKERS’ TERMS グループは、W+Iの枠組で雇用した労働時間専門家 とも協力して、できる限り幅広く従業員の希望に応 える労働時間モジュール・システムを開発した。モデ ルの1つは、エンジニアリング部門で従業員を柔軟 に配備するための「daily repair」シフト勤務モデ ルで、これについて以下で詳しく紹介する。 が人事委員会(従業員代表委員会の最も重要な機関 の1つ)への統合によって強化された。こうして、他 のテーマとの関連を保障するとともに、使用者と同 じ目線で行動できるようになっている。 3.3 暫定的な結論 背景——アメリカとインドに2つのエアバス・エン ジニアリング・センターが設立されてから、ハンブル グのエアバス拠点のエンジニアは、自分たちのノウ ハウをできるだけスムーズに提供するという課題に 直面している。このサービスは、顧客の現場で発生し た問題を直ちに解決できるようにしなければならな い。さまざまな拠点の時差のため、オンコールサービ スと待機サービスの組み合わせが導入された。これ によって、24時間体制で問い合わせを処理すること ができる。従業員への影響は自明だった――次第に 常駐的なオンコール業務に就かされるようになり、 それに伴って負担が大きくなった。 エアバスとマン・ウント・フンメルの2つの例は次 のことを示している。すなわち、「ワーク+イノベー ション」のようなプロジェクトは企業の従業員代表 に、従業員のために、従業員が参加して、積極的に転 換プロセスを方向づける権限を与える。技能取得、コ ンサルティング、並行して行う実践プロジェクトの 3本柱により、労働者代表は(既存の)労働組合の能 力を活性化させて拡大し、使用者と効果的かつ対等 に向き合うことに成功した 9 。転換は、形成すること ができるのだ。結局のところ、これまでも今も、従業 員のためにこれを行うことが任務である。 新たに開発されたシステムでは、週末交替制のス ケジューリングが自発的かつ自己管理で行われるよ うになり、従業員は、どれくらいの頻度で週末のオフ ィス勤務やオンコール業務に対応できるか、考慮す る必要のある個人的事情があるかを知らせる。 サービスを提供できない場合は、エスカレーショ ン・メカニズムが発動する。これによって上司は、労 働時間数や年齢、家族の状況など、規定の基準に基づ いて人員配置を決定できる。このモデルでは、週末労 働に報酬が支払われる。祝日と(個々のケースでは) 週末も在宅で勤務できる。 パイロット段階とその後の評価を経て、最終的に この労働時間モデルに関する事業所合意が締結され、 計画実現性が改善されるとともに、より広く受け入 れられるようになった。この過程で使用者側も、作業 編成と労働の満足度を併せて考慮しなければならな いことを学んだ。 労働組合の力の利用 この事例の従業員は、同社の弱点といえる部署で雇 用されている。ここで、使用者はプロセスがスムーズ であることに大きく依存している。このサービス部門 が24時間体制で機能しなければ、障害が起きる。緊密 に同期された航空産業において、そのような障害また は遅延は大幅なコスト増につながり、企業の観点から すれば何としても回避しなければならない。そのため、 労使双方が従業員のことを考えてプロセスを規定す ることに合意している。ここで、被用者代表は従業員 の構造上の権限を利用することができた。 エアバスの事例によって、W+Iが利用できるように した高度な制度上の権限も明らかになった。プロジ ェクトの副次的効果の1つとして、既存の作業部会 「ワーク+イノベーション」から引き出されたこ の結論は、最近発表された研究によって学術的にも 確認されている。「デジタル化/インダストリー4.0を テーマとする訓練コースに出席した従業員代表委員 会メンバーは、このテーマに関する訓練コースに出 席しなかったメンバーよりも頻繁に、事業所内のテ クノロジーの変化プロセスに関与し、有能な従業員 や労働組合、外部コンサルタントの支援を活用して いる」(Kuhlenkötter et al. 2019: 18)。 この研究は、「ワーク+イノベーション」のような プロジェクトを通して技能を取得し、テクノロジー の変化プロセスに関与している従業員代表委員会は、 参加を促す方針を、したがって従業員の関与を重視 することが多く(cf. ibid.: 18f)、それによって労 働組合の組織的能力のさらなる強化に貢献している、 とも述べている。 2016年から2019年にかけて、ドイツで活動してい る中規模機械メーカーから多数の自動車メーカーま で、100を超えるパイロット事業所・企業がW+Iに参加 した。参加者が300人を優に超える20回近くの技能取 得コースが開催され、非常に要求度の高い事業所実 施プロジェクトが数多く実施された。 従業員の関与と積極的参加を最初から考慮すれば、 成功の見込みが特に高いことが判明した。参加は共 同決定に正当性を与え、新しいアイディアや提案を 9 完全を期すために、ここでIGメタルが事業所レベルだけで組合の能 力を利用しているわけではないことに留意すべきである。この転換 を公正で社会的責任のあるものにするために、IGメタルは社会政策 の領域も重視しており、したがって政策決定への要求も明確に主張 している。例えば2019年の夏に、気候・自然保護団体など他の市民 社会団体と力を合わせ、ベルリンの大規模な#fairwandelデモで政治 家に共同要求を突きつけた(社会上の権限)。5万人以上の参加者が、 転換の公正な規定と雇用を維持することの必要性を強く訴えた。 10 PROACTIVELY SHAPING TRANSFORMATION – FOUR PRACTICAL EXAMPLES 生み出し、切迫した変化に対する不安を取り除く。参 加を重視する事業所政策の鍵は、積極的な従業員代 表委員会と職場委員構造である。現場の具体的な変 化について考える場合、特に職場委員が中心的役割 を担う。したがって、自明のこととして良いデジタル ワークを目指すことは、IGメタルの職場委員活動の 内容を向上させる絶好の機会であり、従業員には非 常に大きな付加価値をもたらすことになる。IGメタ ルの役割は、できるだけ包括的に職場委員を支援す ることである。 プロジェクト活動への使用者側の早期関与(特に、 使用者が任命した専門家に労働組合教育フォーマッ トを開放することや、事業所実施プロジェクトを立 案するための同数の労使代表によるプロジェクト・ グループの設置)も、成功をもたらすことが判明した。 マン・ウント・フンメルの事例は、この方法のほうが 制度上の権限をうまく利用できることを示している。 さらに、特に労働組合が必要に応じて「不満を表明」 できる十分な組織上の権限を有する事業所では、転 換期においても良い労働は実現可能ということがで きる。事業所における対立状況に関与する能力と意 欲は、通常、従業員にとって有利な解決策を得るため の必須条件である。要は「賢明に交渉する」ことであ る(cf. Huzzard/Gregory/Scott: 2004)。 労働の世界の転換は、労働組合の教育活動にも大 きな要求を突きつけている 10 。目的は、包括的な専門 知識やプロセス知識を伝えることである。テーマと 共同決定当事者に求められる能力が多様であるため、 それぞれのニーズに合わせた教育、コンサルティン グ、技能取得を提供する必要がある。W+Iプロジェク トの範囲で検証した3本柱、すなわち能力取得課程、 内容的に関連する事業所実践プロジェクト、必要と なる支援策の提供は、この点で重要なインパクトを もたらした(Janitz/Schroth 2019: 215)。加えて、 転換プロセスを積極的に理解すれば、事業所で労働 政策関連の問題提起を強化する機会が生まれる。労 働組合と大学の学習工場との協力をさらに拡大すれ ば、必要な知識を伝えるうえで大きな役割を果たす ことができる。この協力関係は、現実的な環境で実践 型の知識を習得できるようにし、特定のプロセスを 10 労働組合の教育活動は、常にIGメタルの中心的任務の1つであった。 2019年には、組合費収入総額の約5%が教育分野に投じられた(cf. IG Metall 2020: 4)。教育活動は政治的な方針を示し、名誉職の利 益代表者と専任の従業員の連帯を促進する。さらに、「労働組合と 個人が行動、対話、貫徹力を維持し、事業所や社会的・政治的対立 において、しっかりと自己主張できるようにすることに貢献する」 (IG Metall 2012: 7)。転換は、労働組合関連の当事者が新しい課 題や推進力となる要素、傾向に対処しなければならないことを意味 する。転換の要件は複雑さを増しており、より迅速に決定を下さな ければならないことが多い。したがって教育活動の任務は、適切な 知識や技能を伝え、当事者が専門知識を持ち、効率的に行動できる ようにすることである(cf. ibid.)。ワーク+イノベーションは、 この点で重要なインパクトを与えた。 空間的・時間的に凝縮して実際に触れられるように する(cf. Heyer/Reuter 2019: 217 ff.)。 しかし何よりも、W+Iの経験は、労働の世界に対す るデジタル化の影響が実際にどれほど包括的である かを改めて実証した。いくつかの事業所では、あらゆ る手段が尽くされた。だが、それは労働の世界の転換 がいかにオープンであるかを示してもいる。必要な 紛争対応力を持つ、よく組織された有能な職場委員、 従業員代表委員会、労働組合によって、将来良い労働 の機会を利用し、従業員にとってのリスクを最小限 に抑えることもできる。労働組合行動の中心となる 場所は事業所であり、それは今後も変わらない。しか し、IGメタルが組織する事業所の優に半分以上が、グ ローバルに活動する企業やグループ連合の傘下に入 っている。職場の先行きに関する決定は、もはや現地 ではなく企業レベル、グループ・レベルで下される。 そして多くの場合、まさに事業所において、労働の世 界の転換に関連する課題をうまく克服するための明 確な戦略が存在しない。2019年夏のトランスフォー メーション・アトラスの結果は、これを強く裏付けて いる。IGメタルは、さまざまな転換関連のテーマにつ いて、組織する全分野の2000弱の事業所の従業員代 表委員会と職場委員のアンケートを行った。対象の 従業員代表委員会の87%が、自社における決定の全 て、または一部がグループ・レベルで下されていると 述べた。対象事業所の過半数に、転換戦略がほとんど、 あるいはまったくなかった。 労働組合にとって、これは事業所・企業関連・国際 的な労働組合活動をよりよく統合しなければ、効果 的な対抗力を構築できないことを意味する。理想を 言えば、既存の共同決定機会が補完し合い、相互に補 強することが望ましい。W+Iの事例をさらに2つ紹介 し、既存の労働組合の能力を集合的に動員すると、実 際にどのように成功し得るかを示す。 3.4 構造変化の積極的形成——シーメン ス・テュービンゲンの事例 シーメンス・テュービンゲンでは、多くの空港のチ ェックインコンベヤーなどに使われる、ギヤードモ ーターを製造している。事業は何年にもわたって低 迷しており、2007年に経営陣が組立工場をチェコ共 和国に移転すると発表し、およそ500人の従業員に衝 撃を与えた。従業員代表委員会は、労働組合にしっか りと組織化された従業員とともに、テュービンゲン の拠点を維持する方法を徹底的に探した。第一歩と して、デジタル技術を利用してコストを削減し、工場 を再び黒字転換する方法に関するアイデアを集めた。 従業員は短期間で、数百万ユーロを削減する可能性 のある80件の具体案を提出した。当初は懐疑的だっ た経営陣も、これに感銘を受けた。組織上の権限の動 員によって、使用者側を説得してW+Iに参加させた。 11 FRIEDRICH-EBERT-STIFTUNG – SHAPING INDUSTRY 4.0 ON WORKERS’ TERMS 技能取得課程の対象となる従業員を選び、事業所プ ロジェクト・グループを設置したのち、IGメタルの助 けを借りて包括的に交渉した。最終的に、例えば輸送 部門や製造、サービスについて、一連のデジタル・ア プリケーションに合意した。例えば、現在製造現場で は画面上に個々の機械の稼働率や可用性がリアルタ イムで表示される。サービス部門ではスマートグラス が使われている。これによって世界中の顧客に、トラ ブルシューティングの実施方法やギヤードモーター の部品交換方法に関するデータや指示を提供するこ とができる。オフィスでは人工知能を、組立工場では ロボティクスを利用して単調な反復的プロセスをな くし、より質の高い仕事ができるようにしている。 これらの取り組みが可能となったのは、1億ユー ロのシーメンスAGデジタル化未来基金のおかげであ る。この基金は、「構造変化の積極的形成」をスロー ガンに、拠点閉鎖を回避するため、総合従業員代表委 員会がグループ企業と取り決めた。この基金を財源 とする対策の目的は、人員削減ではなく、更なる技能 取得対策を取ることにより、初期段階で構造変化に 対応することである。この基金から100万ユーロ以上 がテュービンゲンに投入された。同数の労使代表で 構成される委員会が資金の配分を決定した。テュー ビンゲンの従業員代表委員会とシーメンス総合従業 員代表委員会は、IGメタルの助けを借りて、拠点の閉 鎖を阻止しただけでない。シーメンス・テュービンゲ ンは現在、シーメンス・グループ内でデジタル化工場 の範例となっている。2019年にボンで開催されたド イツ従業員代表委員会大会で、フベルトゥス・ハイル 連邦労働大臣が出席する中、両従業員代表委員会は、 従業員が関与(組織上の権限)した事業所・企業レベ ルの共同決定(制度上の権限)の模範的な相互作用を 評価され、ドイツ従業員代表委員会賞の金賞を贈ら れた。 3.5 グローバルな公正に尽力—— リア・コーポレーションの事例 ミシガン州サウスフィールドに拠点を置くリア・ コーポレーションは、世界有数の自動車部品メーカ ーで、37カ国に240以上の拠点がある。およそ17万人 の従業員がシートや電子装置、内装を製造しており、 うち6500人がドイツにいる。ドイツの全17の拠点の うち2カ所がW+Iに参加した。理由——経営陣は、業務 プロセスと直接リンクし、リアルタイム生産管理を 可能にするデジタル生産管理システム(Manufacturing Execution System)の導入を計画していた。それによ ってプロセスを最適化し、プロセスのエラーを発見 することができる。すぐに、このシステムの導入によ る業務や雇用への影響が、全ての人に及ぶことが分 かった。そこで総合従業員代表委員会は、専門委員会 が集中的にプロジェクトを担当し、IGメタルととも に定期的に従業員に現状を知らせることを決定した。 2018年初め、アメリカのリア本社は最終的に、全世 界の開発拠点と販売部門を分離して独立会社を設立 する(エンジニアリング・カーブ・アウト)と発表し た。ドイツだけで、1100人の従業員が影響を受けた。 国境を越えた従業員間の交流やネットワーク作りを 容易にするために、総合従業員代表委員会はIGメタ ル本部の国際部に支援を求めた。IGメタルの多国籍 ネットワーク・イニシアティブは、国境を越えた従業 員代表間の協力を可能にすることを目指しており、 これが、リア総合従業員代表委員会にとっても効果 的に働いた。外国拠点の従業員・労働組合(組織上の 権限)を強化することで、ドイツの拠点における脅迫 的措置の可能性を抑え、良好な労働条件を確保して いく。 共同プロジェクト・チームは、その後マルチトラッ ク・アプローチを決定した。自動車産業に対する転換 の影響を取り上げたドイツの監査役会の重点的会合 で、ドイツの同僚たちは、インテリジェント・シート システムや自動運転関連の事業分野といった製品ラ イン計画について、幅広く情報を得た。第2段階では、 12カ国の代表で構成される欧州従業員代表委員会で、 インダストリー4.0とデジタル化が自動車産業に及 ぼす影響や、経営陣がすでに具体的に計画している 対策に関する情報が提供された。雇用維持、労働安全 衛生、将来の更なる技能取得のニーズに対する影響 について協議した。寄せられた質問を集め、ヨーロッ パ・アフリカ地域を担当する経営陣に送付し、コメン トを求めた。 同時に、ドイツの総合従業員代表委員会は、その主 な役割の重点を新たな課題とすり合わせた。同委員 会は経営陣に対し、新しい労働時間規定、アイデア管 理、データ保護をめぐる交渉に入るよう求めた。IGメ タルと総合従業員代表委員会の共同ニュースレター で、各拠点の従業員に現状を知らせた。これが見過ご されることはなかった。IGメタルは多くの新規組合 員を勧誘できたのである。1年以内に、従業員約500 人のミュンヘンのリア欧州本社をはじめ、それまで 従業員代表委員会がなかった5つの開発拠点で、初 めて従業員代表委員会選挙が実施された(組織上の 権限と制度上の権限の強化)。 同時に、欧州従業員代表委員会(EWC)は、主に変 わりゆくバリューチェーンの問題について議論した。 過去数年間に、特に中欧と南欧で多くの工場が閉鎖 され、生産拠点がEU域外の国々に移された。ヨーロッ パ・アフリカ地域で働くリア従業員6万人のうち、 EWCで代表されているのは3分の2に満たない。セル ビアと南アフリカ、とりわけモロッコだけで、リアは 2万人以上を雇用していた。これらの従業員とはま ったく接触がなかったが、同じ経営陣の傘下にある。 IGメタルとフリードリヒ・エーベルト財団の多国 籍企業ネットワーク・イニシアティブを活用して、 12 PROACTIVELY SHAPING TRANSFORMATION – FOUR PRACTICAL EXAMPLES 2018年と2019年に初めて、3カ国すべてのリア従業 員と管轄の労働組合を対象とするワークショップが 開催された(cf. on South Africa: Chiwota/Ludwig/ Mogane 2019: 57 ff.)。目標は明確で、相互信頼の 構築、改編計画に関する情報交換、各国における従業 員の権利の強化である。EWCはその後、非EU加盟国の 被用者を初めてEWC会合にゲストとして招待するこ とを決定した。 同時に、IGメタルとドイツ総合従業員代表委員会 は、ドイツにおけるエンジニアリング部門分離計画 の具体的構成について経営陣と交渉し、労働協約が 締結された。この協約は特に、新設のリア・コーポレ ーション・エンジニアリングGmbHに労使同数の代表 から成る監査役会を設置し、総合従業員代表委員会 の活動を改善するための追加的職務免除を予定して いる。さらに、欧州従業員代表委員会担当の専門官も 一人雇用することができた(制度上の権限)。 最終的に、2019年のEWC会合で経営陣とのあからさ まな対立が生じた。EWCの招待で、南アフリカとセル ビアから2人の選出労働者代表がゲストとして出席 した。すると経営陣はEWCメンバーに、2人を経営陣 との交流から除外するよう求めたのである。EWCはこ れを全会一致で拒絶し、経営陣は会議室をあとにし た。その日のうちに、ドイツの2つのリアW+Iプロジ ェクト事業所の1つが、超過労働の要請を拒否した。 その結果、50万ユーロ以上に相当する生産が欠損し た(構造上の権限)。2020年にリア経営陣は初めて、 欧州・アフリカ地域の全ての国から選出従業員代表 を「地域パートナーシップ会合」に招待し、現在の経 済情勢や新しい事業分野に関する情報を提供した。 EWCから経営陣への「我々は見ている」という強力な シグナルは、コロナ・パンデミックによるロックダウ ン期間中にも最初の成果を上げた。例えば、リアの南 アフリカの拠点における操業短縮手当の支払いをめ ぐる問題は、EWCの介入後に事業所レベルで迅速に解 決した。欧州従業員代表委員会の明確な目標は依然、 すべての非EU加盟国のゲスト枠を貫徹することであ り、中・長期的には、全世界で被用者の権利を保護す るためにグローバル枠組合意を締結することである。 13 FRIEDRICH-EBERT-STIFTUNG – SHAPING INDUSTRY 4.0 ON WORKERS’ TERMS 4 結論および概観 これらの事業所でのW+Iプロジェクト実施例は、従 業員の利益を最優先してデジタル・トランスフォー メーションを形成するため、従業員と労働組合がど のように既存の労働組合の能力を強化し、利用・拡大 すれば良いのかを示している。マン・ウント・フンメ ルでは、労働組合にしっかりと組織された従業員と 直接交流して新しいデジタルテクノロジーの導入に 備え、それによって従業員代表委員会の正当性と組 織上の権限を強化した。従業員代表委員会の制度上 の権限は、デジタル化プロジェクトをめぐる使用者 と従業員代表委員会との協力に関する(枠組)事業所 合意によって永続的に強化された。エアバス・オペレ ーションズGmbHの労働時間制度をめぐる討議で、被 用者代表は、同社の弱点といえる部署で働く従業員 の構造上の権限を利用することに成功した。労働時 間編成に関する作業部会を人事委員会に統合するこ とによって、従業員代表委員会の制度上の権限が強 化された。 IGメタルが組織する企業の優に半分以上がグロー バルに活動する企業やグループに属しているので、 デジタル・トランスフォーメーションの過程で効果 的な対抗力を強化するには、事業所・企業関連の国際 的な労働組合活動の連結を改善するしかない。テュ ービンゲンのシーメンス・ギヤードモーター拠点閉 鎖は、具体的なコスト削減案を提示すると同時に、組 織上の権限と制度上の権限を動員することによって 阻止された。W+I参加のおかげで、この拠点は現在、 シーメンス・グループ内でデジタル化工場の範例と なっている。 世界的な自動車部品メーカーであるリア・コーポ レーションの複数の開発拠点が独立会社に分離され たとき(エンジニアリング・カーブ・アウト)、IGメ タルの多国籍ネットワーク・イニシアティブは、特に ドイツの拠点で脅迫的措置が講じられる可能性を抑 えるために、国境を越えて従業員・労働組合の組織上 の権限を強化するという課題に取り組んだ。これは、 5つの拠点で従業員代表委員会の選挙を実施し、組 織上の権限と制度上の権限を構築することなどによ って達成された。従業員の構造上の権限の活用で生 産停止時間が生じた。最終的に、新設されたリア・コ ーポレーション・エンジニアリングGmbHの労働協約 によって、従業員と労働組合、従業員代表委員会の制 度上の権限が強化された。この協約には、労使同数の 代表から成る監査役会と、従業員代表委員会の活動 を改善するための職務免除規定の追加が盛り込まれ ている。 IGメタルの要求は依然、労働の未来が使用者だけ に委ねられないようにすることである。「ワーク+イ ノベーション・プロジェクト」は、この要求を満たす ために、事業所・企業関連、および国境を超えた重要 なインパクトを示した。2016年のプロジェクト開始 時点の仮定が確認された。すなわち、デジタル・トラ ンスフォーメーションは実にさまざまな関連におい て、実にさまざまな速度でドイツの産業に入り込ん でくる、従業員代表委員会と労働組合の職場委員は オーダーメイドの支援を必要とする、という仮定で ある。したがって、IGメタルがこの道を進み続けるこ と、2020年中頃から2年間の移転・継承プロジェクト (transfA+Ir)を実施していることは、妥当と言うほ かない。 2016年初めにW+Iプロジェクトが始まってから、転 換のペースが加速しており、新しい力学が出現して いる。デジタル化に加えて、グローバル化、電気モビ リティ、気候変動も、変化の大きな原動力となってい る。雇用、変化する技能要件、アウトソーシング、新 しいビジネスモデルの問題(ほかにも例はある)もそ のままであったり、ますます重要になっている。新た に欧州社会基金とドイツ連邦労働社会省の助成を受 けたtransfA+Irによって、IGメタルはこれらの変化 しつつある枠組み条件を考慮している。transfA+Ir の枠内で、転換を推進するさまざまな要素に関して 多様なターゲットグループ(例えば従業員代表委員 会、職場委員、専従の事業所担当者)を支援するため のデジタル・ツールキットが開発されている。W+Iプ ロジェクト開始以降に重要性が高まっているテーマ (人工知能、人材開発・技能取得、資源効率、雇用維 持問題、国境を超えた問題など)が、このプロジェク トに明確に統合されている。このツールボックスに は、チェックリストや事業所合意のキーポイント、継 続教育、技能取得コンセプト、診断用ツールなどが盛 14 FRIEDRICH-EBERT-STIFTUNG – SHAPING INDUSTRY 4.0 ON WORKERS’ TERMS り込まれる予定である。これらは14のプロジェクト 事業所/パイロット企業で検証し、絶えず拡大してい く。W+Iと同様に、外部コンサルティングサービスも 提供される。 IGメタルは220万の組合員を擁するドイツの最大 の単一労組として、成功し続けるために自ら変化す ることがいかに重要であるかも認識している。それ ゆえに、ニュルンベルクの2019年労働組合大会の代 議員は、「事業所からIGメタルを考える」プロジェク トを承認した。このプロジェクトの目的は、事業所を 中心的な行動の場として、従業員のために、専門知識 を持ち、参加型で、紛争対応力を持って転換プロセス を形成するために、今後IGメタルの活動がどう変わ るべきかを見極めることである。具体的なプロジェ クトで、事業所の組合員と専従労働組合書記が、現場 で、事業所で、IGメタル各事務所で、労働組合活動の 改善案を考え出す。IGメタルが、事業所レベルと企業 レベルでも、国境を越えた労働組合政策に関しても、 今後も強力かつ効果的に行動できるかどうかは、 2023年に判明予定のプロジェクトの結果にかかって いる。それは、労働の世界の転換を推進する要素や傾 向、力学が、工場の門や国境で止まる訳ではないから である。 15 FRIEDRICH-EBERT-STIFTUNG – SHAPING INDUSTRY 4.0 ON WORKERS’ TERMS BIBLIOGRAPHY 〔 1 〕 Chiwota, Elijah/Ludwig, Carmen/Mogane, Kenneth(2019): Transnational Worker Solidarity: Building an African-European Network in Lear Corporation, published in: South African Labour Bulletin, 43(2), 2019 〔 2 〕 Heyer, Irene/Reuter, Melissa(2019): Lernfabriken – neue Lernorte für Arbeiten 4.0, published in: Mit»Arbeit und Innovation« die digitale Zuku- nft gestalten, published in: Schulz, Irene(Hrsg.): Industrie im Wandel – Bildungsarbeit in Bewegung, 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The views expressed in this publication are not necessarily those of the Friedrich-Ebert-Stiftung(or of the organization for which the author works). This publication is printed on paper from sustainable forestry. 従業員のためのインダストリー4.0 IGメタルの「ワーク+イノベーション」プロジェクト デジタル化とグローバル化は労働 の世界に大変革をもたらしてお り、職務や事業所文化、企業組 織の在り方を変容させている。こ れらの変化は、事業所が余剰に なったり、海外移転によって、従 業員に脅威をもたらすことが多 い。 IGメタルは、そのような転 換 に積 極的に関与することによって、労 使双方に利益を与える形でイノベ ーション・プロセスを管理できるこ とを示 している。IGメタルは、その 強力な組織上の権限と制度上の 権限を利用して、従業員教育を 企業独自のイノベーション・プロジ ェクトと組み合わせる革新的なプ ロジェクト、「ワーク+イノベーショ ン」を立ち上げた。従業員と経営 陣が共に参加し、事業所・企業レ ベルにおける具体的な問題の解 決策を考える。 したがって労働組合は、従来の利 益 代 表 を超 えた役 割 を担 う。IGメ タルは、従業員の視点からイノベ ーション・プロセスを促進すること によって、国境を越えたさまざまな 生産拠点で、事業所を維持した り、事業所の編成方法に関して 被用者に発言権を与えたり、事 業所の質に影響を与えたりするう えで貢献している。同時に、この ような参加型のアプローチは、労 働組合と従業員代表委員会の能 力を強化する。 このテーマに関するさらに詳しい情報については下記参照— https://www.fes.de/lnk/transform FES(フリードリヒ・エーベルト財団)の紹介 1925 年、労組出身でドイツ初の民選大統領の名を冠 し、ドイツ社会民主党(SPD)党首が設立。大統領の 遺志を継いだ社会民主主義のもと、自由な労働組 合・市民社会の強化を促進。予算はドイツ連邦政府 の公的資金で、年間1億ユーロ以上。 日本語版発行人: 全日本金属産業労働組合協議会JCM 事務局長 浅沼 弘一 *日本語版発行にあたり、表現の修正は原文の意図を 変えない範囲で、金属労協の責任において行った。